2012年9月3日月曜日

パラダイス412




「ギャンブルなんか辞めなさいよ!!」

と、良くオンナに言われた

俺は本物のギャンブラーだぜって

相手にしなかった.....






モクモクとたちこめるタバコの煙

耳を引き裂く大音量の音楽と

パチンコの機械音

ここが俺のホームグラウンド


スロットの島を偵察しながら歩いていると


「おおっ、兄ちゃん!7揃えてくれる?」


と、顔馴染みの4本指のおっさんに

呼び止められる。

ポン、ポン、ポンとリズミカルに

7を揃える...






ポツリと1台スロットが空いている


いつも俺が打つ台だ

暗黙の了解で誰も座らないのだ


因みに勝負機種は

パラダイス412と言う

スロットマシーンだ


スロット機なんか所詮

人間が作った物だ

知能指数の高い俺にしてみれば

機械の解析なんて

一瞬でしてしまう


今日も淡々とコインを入れ

レバーを叩き

リズミカルにボタンを押す


俺の体が一瞬ピクリと止まる





周りの客がチラリと俺のほうを見る

俺のコブラと異名を持つ

親指がボタンを止める




ピュンピュンピュン


777


周りの客の視線を背中に感じながら

俺はコインをザクザクと出していく






4本指のおっさんが

ロング缶の甘いコーヒーと

若いと言う理由でダブルクリームパン

を差し入れてくれた


すでに他のお客の目押しのお礼で貰った

ジュースで台の上の棚は一杯だ


ドル箱たっぷりに溢れたコインを

店員に運ばせる


今日も財布が曲がらなくなる






たいして飲まないのに

クラブに行って高いボトルを入れたり

100万持って

何となく旅行に行ってみたり

食事に行けば当たり前のように

皆におごり

日本なのに

店員にチップをあげたり

金銭感覚は

いつのまにか0が2つ増えていた



スロットの儲けで買った

マスタードイエローの愛車に

乗り込もうとするとふと視線がボンネットに留まる


パラダイス412


と落書きされてた


一瞬ムカついたが

確かにそうやね

と、微笑んだ


この余裕.....






しかしパラダイス412が

撤去されると何を打っても勝てなくなり

狂った金銭感覚も中々元に戻らず

1年間学校に行ってなかったので

留年するし

差し入れの甘いもので

21本も虫歯になるし

スロットのしすぎで腱鞘炎にもなるし


マスタードイエローの車を

運転してると

タクシーに間違われるし...




20年たった今

俺は人生のギャンブルにはまっている....



んっ?





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