「ギャンブルなんか辞めなさいよ!!」
と、良くオンナに言われた
俺は本物のギャンブラーだぜって
相手にしなかった.....
モクモクとたちこめるタバコの煙
耳を引き裂く大音量の音楽と
パチンコの機械音
ここが俺のホームグラウンド
スロットの島を偵察しながら歩いていると
「おおっ、兄ちゃん!7揃えてくれる?」
と、顔馴染みの4本指のおっさんに
呼び止められる。
ポン、ポン、ポンとリズミカルに
7を揃える...
ポツリと1台スロットが空いている
いつも俺が打つ台だ
暗黙の了解で誰も座らないのだ
因みに勝負機種は
パラダイス412と言う
スロットマシーンだ
スロット機なんか所詮
人間が作った物だ
知能指数の高い俺にしてみれば
機械の解析なんて
一瞬でしてしまう
今日も淡々とコインを入れ
レバーを叩き
リズミカルにボタンを押す
俺の体が一瞬ピクリと止まる
7
7
周りの客がチラリと俺のほうを見る
俺のコブラと異名を持つ
親指がボタンを止める
7
ピュンピュンピュン
777
周りの客の視線を背中に感じながら
俺はコインをザクザクと出していく
4本指のおっさんが
ロング缶の甘いコーヒーと
若いと言う理由でダブルクリームパン
を差し入れてくれた
すでに他のお客の目押しのお礼で貰った
ジュースで台の上の棚は一杯だ
ドル箱たっぷりに溢れたコインを
店員に運ばせる
今日も財布が曲がらなくなる
たいして飲まないのに
クラブに行って高いボトルを入れたり
100万持って
何となく旅行に行ってみたり
食事に行けば当たり前のように
皆におごり
日本なのに
店員にチップをあげたり
金銭感覚は
いつのまにか0が2つ増えていた
スロットの儲けで買った
マスタードイエローの愛車に
乗り込もうとするとふと視線がボンネットに留まる
パラダイス412
と落書きされてた
一瞬ムカついたが
確かにそうやね
と、微笑んだ
この余裕.....
しかしパラダイス412が
撤去されると何を打っても勝てなくなり
狂った金銭感覚も中々元に戻らず
1年間学校に行ってなかったので
留年するし
差し入れの甘いもので
21本も虫歯になるし
スロットのしすぎで腱鞘炎にもなるし
マスタードイエローの車を
運転してると
タクシーに間違われるし...
20年たった今
俺は人生のギャンブルにはまっている....
んっ?